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軟磁性材で、世界最高レベルの高透磁率を実現
~電動化・自動運転化対応の高感度センサ向けに開発~

大同特殊鋼株式会社(社長:石黒 武)は、自動車の電動化、自動運転化への動きに伴いニーズが増大しているセンサの高感度化に対応できる、世界最高水準の高透磁率の軟磁性材を開発しました。これを契機に、高透磁率の軟磁性材のラインアップを広げ、自動車用の各種センサ向けに販売します。

今回開発した高透磁率の軟磁性材は二種類あり、ひとつは透磁率を300,000と世界最高水準に高めたMENPC2-S(読み方:メン・ピーシー・2エス)。透磁率とは材料の磁化のしやすさ(磁束の通りやすさ)を示した数値で、透磁率の高い材料の使用によってセンサの感度が高まります。現在、一般的にセンサに使用される材料である電磁鋼板(透磁率5000)に比べ、MENPC2-Sの透磁率は格段に高く、主な用途として、高感度電流センサに適しています。

もうひとつは、MENPC2-Sの約2倍の磁束密度(1.5T(テスラ:磁束密度の単位))をもち、透磁率を140,000に高めたMENPB-S(メン・ピービー・エス)。磁束密度とは材料の単位断面積あたりの磁束の数を示し、磁束密度の高い材料は大電流の処理が可能です。このためMENPB-Sは主な用途として、自動車電動化に伴い使用されるバッテリーの大電流センサの高感度化対応に適しています。バッテリーの電流センサは残量の計測を目的としており、MENPB-Sの使用によりセンサの感度が高まると残量計測の正確性がアップし、電池の容量範囲が広がり、走行距離増加に貢献します。

今回、MENPC2-S 、MENPB-Sのいずれも主にニッケル、その他の微量添加元素の成分バランスと製造プロセスの最適化により、高透磁率化を実現しました。MENPC2-Sは同タイプの当社従来品に比べ透磁率は20%向上。MENPB-Sは同タイプの当社従来品に比べ透磁率は75%向上しています。

高透磁率、高磁束密度のニッケル合金は、積層して使う電磁鋼板とは異なり、いずれも積層せず使用することが可能なため、センサの小型化につながります。自動車内部・外部の環境を各種センサで感知し、その情報を制御につなげる自動運転の普及には、センサの高感度化ならびに小型化に寄与する材料が求められていました。

当社は、今回の2材料の開発を機に、センサの小型化や高感度化に対応した高透磁率軟磁性材のラインアップ拡充を進め、自動車の電動化、自動運転化推進に貢献します。

特徴

製品名 タイプ 主な用途 透磁率
MENPB-S 小型化に適した高透磁率 xEV用バッテリー大電流センサ 140,000(同タイプ当社従来
製品MENPBの透磁率は
80,000)
MENPC2-S 高感度に適した超高透磁率 xEV高感度電流センサ 300,000(同タイプ当社従来
製品MENPC2の透磁率は
250,000)

製造可能形状・寸法

製造可能形状 帯鋼
製造可能寸法 板厚 0.1mm~1.5mm、板幅 10mm~350mm

材質の位置付け(イメージ)

用語説明

*1 透磁率    磁性を表す数値で、材料の磁化のしやすさ(磁束の通りやすさ)を示したもの。
         磁界の強さと磁束密度の関係を表した比例定数。
*2 軟磁性材   磁石にくっつく材料。外部の磁界を取り除くと速やかに磁気がなくなり、元の状態に戻る
         材料。軟磁性材の中で透磁率が最も高いのはパーマロイと呼ばれる鉄ニッケル系合金。
         MENPB-S、MENPC2-Sもパーマロイ。
*3 MEN     登録商標申請中。
*4 磁束密度    磁場の強さに透磁率をかけたもの。ひとつの断面に対する磁束の密度を表す値で、磁束密度が高いほど、例えば、
        駆動系の大電流でのセンサ感度が高くなる。
*5 xEV     EV、ハイブリッド、プラグイン・ハイブリッド車の総称。