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真空浸炭炉「ModulTherm」に浸窒機能を追加し2024年4月から販売
〜自動車の電動化に伴う部品の高強度化ニーズにCO2低排出+省エネで対応〜

大同特殊鋼株式会社(社長:清水 哲也)は、ギアなどの自動車部品の表面硬化を目的とした真空浸炭処理*1をおこなう設備として2008年から販売している真空浸炭炉(製品名:ModulTherm〔モジュールサーモ〕)に、更なる高強度化に貢献する浸窒処理*2を連続的に行う機能を付加して2024年4月から販売します。ModulThermの浸炭浸窒処理により、従来の浸炭処理対比でギア歯面強度の40%向上、焼き入れ時の歪み量の40%低減が期待できます(参考:当社測定値)。
ModulThermは、電気ヒーターを使用するためガスバーナー燃焼方式に比べCO2排出量が少なく、ガス浸炭炉では必要になる休止中の炉内温度の維持や雰囲気ガスの管理が不要なため、省エネルギー性に優れます。浸炭浸窒処理は、電動車の歯車部品などに求められる高い強度を引き出す熱処理として有望な技術です。今回のModulThermへの機能追加により、ガス浸炭炉に比べてCO2低排出かつ省エネルギーでの浸炭浸窒処理を実現しました。
当社は本技術を通じて自動車産業のカーボンニュートラル実現に貢献していきます。

1.背景

政府が掲げる2050年カーボンニュートラル実現に向けて、温室効果ガスであるCO2の排出量削減要求が年々高まってきています。当社では主にギア部品の真空浸炭処理を目的として、従来型ガス浸炭炉に比べて大幅に省エネルギー・CO2排出低減を実現したModulThermを販売することで、カーボンニュートラルに貢献してきました。
一方、自動車はエンジン車から電動車への移行が急速に進んでおり、電動化に伴うギア部品の使用環境変化から、高強度化、低歪み化といった特性の向上が求められています。
これらの要求に応える熱処理技術として、浸炭処理に加えて浸窒処理を行うことで高強度化と低歪み化を実現することができます。当社は鋼材および熱処理設備の製造技術と開発ノウハウの両方を高次元で融合させることにより本技術の確立に成功しました。

2.本技術の特徴

(1)CO2低排出、省エネルギー
環境性能に優れたModulThermでの浸炭浸窒処理により、これまで主流だったガス浸炭炉と比較してCO2低排出、省エネルギーを実現。
(ガス浸炭炉対比 CO2 排出量35%削減〔当社測定値〕)

図1. ガス浸炭炉と比較した真空浸炭炉ModulTherm のCO2 低排出、省エネルギー要因
図1. ガス浸炭炉と比較した真空浸炭炉ModulTherm のCO2低排出、省エネルギー要因

(2)浸窒濃度シミュレーション「浸窒くん」
従来搭載されていた、狙った浸炭層を得るための熱処理条件を容易に導き出す浸炭シミュレーションソフト「浸炭くん」に加え、浸窒層のシミュレーション化も実現。狙った浸炭浸窒層*3を得るための熱処理条件を容易に決定することが可能。

(3)安 全
すべての処理工程が真空容器内で行われるため、処理に必要なアセチレンガスやアンモニアガスの漏洩および爆発の危険性が極めて低く、安全な操業を実現。

図2.ModulTherm 外観
図2.ModulTherm 外観

3.その他

報告実績

学会:IFHTSE 28th 2023/11
「Development of Carbonitriding Processes Combining Vacuum Carburizing and Atmospheric Pressure Nitriding.」

特 許

国内および海外で出願済み
特願:2021-198121、2020-118013

補 助 金

ModulThermは、令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金『先進事業』先進設備・システムに採択された製品です。

用語説明

*1:浸炭処理・・・金属表面の硬化を目的として、炭素を侵入、拡散させる処理。
*2:浸窒処理・・・浸炭と同じく金属表面の硬化を目的として、窒素を侵入、拡散させる処理。
*3:浸炭浸窒層・・・金属表面に炭素および窒素が侵入・拡散された層

以上