軟磁性圧粉磁心の保磁力に及ぼす焼鈍温度の影響
 〜 EBSDによる評価 〜


 はじめに

 圧粉磁心は絶縁被膜を施した軟磁性粉を圧縮成形して製造される磁心であり、 動作磁束密度および動作周波数が高いことから高速モーターや自動車用リアクトルへの適用が進められています。
 一般に磁気特性には結晶粒、歪み、介在物、析出物等が影響しますが、圧粉磁心は製造上圧縮成型後に焼鈍を施すことから、 焼鈍により変化する因子と保磁力との関係について調査を行いました。


 調査方法

 (1) 軟磁性粉:Fe-Si粉末、平均粒径D50=27.2μm
 (2) 試験片作製方法:粉末にシリコン樹脂コーティング⇒圧縮成形
 (3) 評価方法:試験片焼鈍(500, 700, 750℃)⇒保磁力測定
 ・直流BHアナライザ EBSD分析
 ・結晶方位(IPF)
 ・塑性歪(KAM)
 ・結晶粒径測定

 結果

 焼鈍温度の上昇とともにKAM値が減少し、保磁力が低下する傾向が見られました。
 また、焼鈍温度が高くなると平均結晶粒径の増加が見られ、それとともに保磁力が減少する傾向でした。
 これらの現象は、磁気特性の劣化が歪みや粒界によって磁壁の移動が妨げられていることで説明されます。
 このように今回の結果を応用すれば、EBSDを用いて軟磁性金属粉末の圧粉磁心の磁気特性劣化の原因解析が可能になります。