
1990年代の初めにモントリオールで開かれた国際会議において、オゾン層の破壊、地球温暖化の原因となる従来のフロンガス(R12,R22)を、近い将来全廃するという取決めがなされた。フロンガスはエアコンや冷蔵庫の冷媒として不可欠なものであり、各国の家電メーカーでは、この国際会議の決定を受けて、クリーンなガスを使った地球に優しい新製品開発が必須となっていた。
特に日本の各家電メーカーでは、こうした流れに素早く対応し、クリーンなフロンガス(R134a)への早期代替を打ち出した。
このR134aは環境負荷数値が劇的に低く、地球環境に優しいが、これをエアコンや冷蔵庫の冷媒として実用化するには大きな問題があった。冷媒用銅管内の残油と反応し、スラッジ(かす)となって回路内のフィルターを目詰まりさせるのである。
銅管は、その製造工程上どうしても潤滑油の使用はさけられない。その一方で、スラッジ問題を解決するには、銅管内の残油を完全に除去した“クリーンチューブ”を製作しなければならない。だが直径が数mm〜20mm以上と範囲が広く、しかも製造ラインでは全長が8000mにも達するものまであり、簡単な作業ではオイル除去は不可能である。かといって大掛かりな工程を加えれば、当然最終製品の価格上昇につながり、商品の競争力低下になってしまう。そこで、銅管の製造工程で欠かせない“焼鈍”工程に、管内のオイルを除去する“しくみ”を組込めないかということになった。
こうして、既に銅管焼鈍炉で多くの実績があった大同に「CT焼鈍炉」開発の打診がきたのである。
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