さらに進化するモノづくりPOWER
大同モノづくり改革DMKプロジェクト

Interview
 
    
    

DMKモデル職場 視察の様子
▲ DMKモデル職場 視察の様子
 これまで、このフロンティアDでは、大同の誇る優れた技術や製品等を開発した、技術者達の姿をご紹介してきた。
周囲の反対を乗り越え、自らの信じる技術を完成させたもの。幾度の失敗にも怯むことなく、根気強く戦い不可能を可能にしたもの。打ち切りを告げられても諦めきれず「机の下」で研究を続け、新たな技術を生み出したものもいた…。
そのどれもが容易な道のりではなく、困難の連続であったが、そこから生まれた“独創的技術”“革新的技術”“夢の素材”の数々が、『技術の大同』と讃えられる所以となっているのである。
 脈々と受け継がれる大同のモノづくりのチカラ。その評価は今も高いが、厳しい社会情勢は、決してモノづくり力の発展に好ましい環境を与えてはくれない。そんな状況下にあって、業界をリードするモノづくり力を維持し、さらに進化させるべく、今大同は立ち上がる。「モノづくり改革」と銘打って進める“DMKプロジェクト”。今回のフロンティアDでは、その実態を追う。
 

技術企業としての軌跡

 「まずは、なんといっても優れた人材の宝庫であったということが言えます。その人材がそれぞれの才能を充分に発揮できる企業としての土壌もしっかりと整っていた。そして、日常業務を進めるとともに、新たな技術を生み出すための“遊び”が許される時代であったということも大きいでしょうね。」
 DMKプロジェクトリーダーとして、この全社プロジェクトの先頭に立つ西村は、これまでの大同のモノづくり力を支えた要因を振り返りそう語った。
 大同はこれまで、人と時代を味方につけ、率先してモノづくりの発展に尽力してきた。その結果、世界をリードする画期的にして優れた技術・製品を数多く生み出してきたのである。例えば、鋳造技術の粋を集めて実現した業界唯一の『垂直式丸型断面連続鋳造設備』。世界でも類を見ない画期的鋳造設備『大断面鋳造機』。チタンの新時代を拓いた世界初の技術「LEVICAST」。棒鋼・線材サイズフリー圧延の先駆的技術「てきすん」…。
 枚挙に暇がないこうした技術・製品達は、鉄鋼づくりにおいて、世界を主導する技術企業としての大同の華々しい軌跡を物語っている。そして現在も価値ある存在として重宝され続けているのである。
 こうしたモノづくりの歴史を受け継ぎ今も高い評価を得る大同が、なぜ、今改めてモノづくりのチカラに焦点を当てるのか?
 それは、“技術企業”として業界をリードする立場であるからこその強い危機感によるものと言える。不況という厳しい社会情勢の中で、日常業務に追われ、新たな技術を生み出すための“遊び”を持つことが難しいという環境。人員スリム化による人材力低下という現実。
 あらゆる企業が同様に置かれているこうした厳しい状況にあって、大同に求められるのは、さらなるモノづくり力の向上である。常に卓抜したモノづくり力を発揮し、他にはない突出した技術を実現する―そんな大同のあるべき姿を守るべく、立ち上げられたのがDMKプロジェクトなのである。
 「会社が生き残るためには、時に思い切った大きな“変化”が必要なんです。」
 そう語る西村の言葉どおり、大同は永きにわたって受け継いできた「モノづくり」に敢えて改革というメスをいれるのである。
 

改革始動

 大同におけるモノづくりの拠点である主要工場トップ陣が集められ、モノづくり力の向上を図るための全社的プロジェクトの必要性が説かれた。明日の大同を支えるための製造力(現場力、技術力)の向上。また、現場オペレーターから技師系スタッフまで、幅広い範囲での人材育成(人間力)の実施。そしてそのプロセスと成果を各工場で連携し、情報を共有することで活動を水平展開していこうというものであった。
 一見問題のない構想に思えるが、このとき、少数派ながらこの構想に疑問を抱くメンバーがいた。大同の工場は、各工場ごとに製造している製品が全く異なる。つまり、それは製造過程や、製造に要する技術・知識、そして製造に対する文化まですべてが異なっているということを意味するのである。だからこそ、これまでも各工場単位での生産性向上活動は行っても、それを他の工場と連携するという活動を重要視することは少なかった。
 当時、星崎工場副工場長を務めていた西村も、疑問を胸に抱いていた少数派のひとりであった。
 「果たしてこれだけ多彩な製造プロセスを抱え、異なる製造文化を持つ工場をすべて改善していけるひとつのプロジェクトなど可能なのだろうか?」
 その想いを議題に載せ、構想の発案者である稲守ら大同経営陣と語り合ううち、どういうわけか西村は、DMKプロジェクトのリーダーに任命される。与えられた課題に疑問を抱く西村を敢えてプロジェクトの一員にしっかりと組み込むことで、より緻密で現実的なプロジェクトになるという“大同的”かつ“改革”にふさわしい人事だといえるであろう。西村は、期待される任務を遂行すべく、少数派だからこその工夫と、プロジェクト全体のベストなバランスを図る視野を持ちながら、着々と改革を進めていくのである。
 
 
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