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突如として日々の暮らしに襲い掛かる激震。私たちは、相次ぐ大地震に自然の猛威を思い知らずにはいられない。
この地震の被害をいかに食い止めるかが、非常に身近な課題として立ちはだかる昨今、地震の揺れを受け止め、吸収することで建物を守る免震・制震装置が注目を集めている。
そうした装置に採用され、優れた性能を発揮し、絶大な効果を期待されているのが大同精密工業が誇る摩擦皿ばねダンパー及びブレーキダンパーである。創業以来培った技術と、優れた性能を持つ皿ばねを活かし、建築業界に一石を投じた免震・制震装置は、今たしかに“安全”という価値を創造し始めている。
今回のフロンティアDでは、この免震・制震装置用摩擦皿ばねダンパー誕生の経緯を追う。
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▲摩擦皿ばねダンパー |
▲ブレーキダンパー |
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▲大同精密工業嵐山工場 |
9年前のその日、完成したばかりの大同精密工業嵐山(らんざん)工場には、工場の建設業者、大林組の幹部たちが見学に訪れていた。さまざまな設備が立ち並ぶ大規模な工場内で、機械部品の生産に追われるその姿は、建屋を建設した彼らの目にも頼もしく映ったことであろう。
産業機械部品の製造に携わる大同精密工業と建築業界での実績を誇る大林組。畑違いというに他ならないこの2社が対面したこの日、優れた耐久性と安定した性能を誇る画期的な免震・制震装置の歴史が思いがけずスタートするのである。
大同精密工業で、あらゆる機械部品の開発に携わってきた玉地らは、この日の大林組との出会いの中で自社製品である“皿ばね”をピーアールする機会に恵まれた。それは、新たなビジネスチャンスを求めるフロンティア精神のなせる業だったが、その時点では大林組で採用してもらうための明確な用途や目的を見出せてはいなかった。
しかしながら大林組の視察メンバーは、建築の分野では目にすることもなかったその部品に、ある種の可能性を感じ自社に持ち帰ったのである。
前年の10年前といえば、折りしも年明け早々に阪神淡路大震災の悲劇に見舞われたその年である。この大地震の影響を目の当たりにし、大林組でも技術者たちが、以前から取り組んでいた“地震対策”の実現を急務としていた。
建物とその中にいる人々の安全を守り、激震による被害を食い止めるべく、免震・制震装置の開発が進む中、大林組技術者たちは自分たちのシビアな要求に応えるばねを探していたのである。
まるで必然の組み合わせであるかのように、そこへ飛び込んできたのが、玉地らが大林組の視察団に託した皿ばねであった。探し求めていた素材を手に入れた大林組からは、早速、まずは免震装置開発のオファーが舞い込んできたのである。玉地らにとっては偶然の出会いから得た自発的なチャンスであったが、まったく経験のない分野への挑戦である。しかし、戸惑う暇もなく、急展開で開発は進められていった。
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免震装置開発のオファーを受け、玉地らは大林組の技術研究所に足繁く通う毎日を送っていた。そこで玉地らはいくつかの課題に直面する。
滑りと摩擦の力によって建物にかかる地震の揺れを吸収する役割を果たし、免震装置の要となるのが大同精密工業のダンパーの摩擦皿ばね支承である。従来、建物の荷重を支える積層ゴムは、温度の変化、時間と共に高さが変化してしまい、安定した性能を得ることが非常に難しかった。しかし皿ばねを併用し、その定荷重の特性を利用することで、積層ゴムの変化を吸収し安定した摩擦力を得ることができた。
大同精密工業では創業当時から空気やガス等の圧縮機に使われるバルブ部品を製造していた。この部品製造で培った熱処理技術や表面加工技術を応用し、非常に精度の高い皿ばねの製造を可能にしていた。こうして生まれる皿ばねは、本来の性能を遺憾なく発揮し、百トンにもなる高い荷重をコンパクトな形状で受け、なおかつ優れた耐久性を持つ。皿ばねが過大な荷重を受けても支えることができるからこそ、極めて安全性の高い免震装置を完成することができた。
この技術はさらに同時進行で開発された制震装置であるブレーキダンパーにも応用された。従来は、ボルトと鉄の板を使用し、その力を調整しようとしていた。しかし、どんな強靭なボルトや鉄板を用いても摩擦が起こり少しでも磨耗してしまえば、その性能はとたんに変化し、安定した性能と装置としての耐久性を維持することは非常に困難となる。こうした従来の制震機能におけるウィークポイントを克服する上でも、玉地らの皿ばねはまさに逸材と呼ぶにふさわしい存在であった。さらに玉地らは、鉄板の代わりに組み込む摩擦材もこれまでの経験とノウハウから見出していた。地震のエネルギーを吸収しながら建物の揺れを制御する・・・その役割はまるで自動車のブレーキそのものである。その共通性に着眼した彼らは、産業用電磁ブレーキを手がけてきたノウハウを活かし、鉄板の間に摩擦材を組み込んだ。
また、性能試験においても独自の試験装置を開発し性能の安定性を証明した。
こうして玉地らは大林組の技術者とともに、皿ばねと、摩擦材を組み込むことによって、求めていた性能を発揮する制震装置を完成させたのである。そして、さらにこれらの装置は、半永久的ともいえる長寿命と、メンテナンスフリーという特長を実現している。それは明日なのか、1年後か、何十年後かわからない地震の襲いくる日に備えることができ、その時に間違いなく性能を発揮するという夢の装置の完成を意味する。そしていま、免震・制震装置の両方で皿ばねは活躍しているのである。
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