大同グループが支える”安全”という価値―
免震・制震装置用 摩擦皿ばねダンパー

異業種の壁を越えて  今回の開発を成功に導いた決め手は、建築物の一部として組み込まれる装置に、精密機械や自動車部品の分野で培ってきた玉地らの技術をうまく組み込んだことだといえるだろう。しかし、この異業種間の交流には、戸惑いがついて回ったこともまた事実である。
「建築屋さんの世界はそれまでまったく知りませんでしたから、感覚の違いを感じることはたしかにありましたよ。」
 と玉地は当時を振り返る。その異業種間の違いは取り扱う数字の桁を見ただけでも現れていた。
「われわれは精密機械の分野です。片や、大型の建築物となれば何十トン、何百トンの世界。そんな数字を目にすることもそれまではそうそうありませんでしたからね。」
理論の上では、自分たちの皿ばねがそれだけの大きな荷重にびくともしないことを自信をもって理解していても、経験値という意味合いでは実感することは難しく、多少の戸惑いも感じた。また一方で、万が一の災害のシーンで、人命にかかわる重要な装置とあってその性能に求められる要求は大変にシビアなものであった。しかし玉地らは、求められる条件をクリアすべく、根気強くシミュレーションと開発を重ね、着実に期待に応えていったのである。
 今回の開発においては異業種間の壁と感覚の違いを抱えながらも、2社の技術者たちが緻密に開発を重ね、お互いを理解しあうことで、これまでにない高性能を誇り、安全という貴重な価値を生み出す装置を創造し得たといえるのである。
 

大同品川ビルの守り神  品川のリバーサイドに立ち並ぶオフィス街にある大同品川ビル。厳重な地震対策を要する病院と同程度の制震性能を持つと噂されるこのビルにも、玉地らの苦心の作である制震装置が組み込まれている。
 このほかにも多数のビルやマンションなどの大型建築物で、大同精密工業と大林組の実現した免震・制震装置が採用されている。
「今現在、免震装置や制震装置を装備していない建物や、これから建設される建築物に少しでも多く採用されるよう今後も大林組さんと協力体制で尽力していきたいと思います。」
 今回の開発による免震・制震装置の評価が次第に高まる中、玉地は、今後も変わらぬ努力と協力体制を誓うように語った。
 その言葉には“地震大国”と呼ばれるこの国の守り神となり得る価値ある装置をつくりあげた誇りと自信が秘められているのかもしれない。

※敬称略(大林組殿)とさせていただきます。

 
 
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