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事業を通じた社会課題解決に取り組むことにより、
SDGs達成への貢献と当社の持続的成長をめざします

社会・環境との共生

創業100周年を迎えた2016年、「Beyond the Special」を大同特殊鋼グループのスローガンとして掲げ、「特別を超える価値」を提供し、情熱をもって人や社会を支え続ける存在でありたいとの思いを込めました。そして今、100年に一度とも言われる自動車業界の変革やデジタル革命の進行により、産業界には技術革新の波が到来しています。さらには、世界で強まる環境規制や気候変動リスクなどの社会課題解決に向けてお客様のニーズも変化しており、そのニーズを満たす素材への需要が高まっています。このような中で当社の果たすべき役割とは、機能性に優れた、すなわち鋼に「特別を超える価値」を付加した素材を提供し、お客様の技術革新を支えることであるという考えに至り、「Beyond the Special」を2020中期経営計画の基本方針としました。

当社は2種類の特殊鋼を生産しています。1つは汎用性の高い量産特殊鋼で、もう1つは、特殊鋼という名のとおり特殊な鋼、特殊な素材です。後者の方は高耐熱、高耐食、高清浄度などの機能性に優れており、お客様のニーズに基づいて時にはお客様と共同開発を行い、ある特定の用途に使用するために新しく生み出された素材です。こうした素材の中には、ハイブリッド車や電気自動車に搭載するモーター用の高性能磁石、半導体製造装置に必要な超清浄鋼などがあり、「当社は未来のモビリティ社会や5Gが実現する革新的なテクノロジーを支えるものづくりをしているのだ」という自負があります。「Beyond the Special」は、お客様との共創を通じて、こうした産業界のイノベーションに寄与する素材を提供し続けるという、大同特殊鋼グループがめざす理想の姿を表しています。

自動車を含むモビリティの未来は確実に電動化や自動化に向けて進んでいますが、まだしばらくはガソリンエンジンの効率改善のために各メーカーが鎬を削る時代が続くと考えています。内燃機関の高効率化には、耐熱性や耐食性など高温・高速回転という厳しい環境下での使用に耐えられる素材が必要不可欠です。一方で、自動車の電動化のためには機能性磁石を欠かすことはできません。当社は、そうした素材が属する機能材料・磁性材料セグメントを成長分野と位置づけ、2020中期経営計画の柱として、構造材料から機能材料への「ポートフォリオ改革」を進めてきました。2019年度では高機能材の供給力を強化する設備投資は完工し、2020年度以降に戦力化できるよう取り組んでいます。
足元は、新型コロナウイルス感染拡大により不透明感が増しているものの、世界がこの状況を克服し、経済の復調とともに需要環境が立ち上がってきた時に、しっかりと対応できる準備を整えておく必要があります。そのためにも、今は低操業下でも耐え抜くことができる事業基盤にするため、コスト圧縮や設備投資の厳選、キャッシュアウト抑制などの対策を講じていきます。

「SDGs(持続可能な開発目標)」が、ビジネスの場だけでなくメディアでも話題にのぼるようになり、認知度が向上しつつあります。世界規模の社会課題に対して、国や行政の取り組みだけでは解決できません。そこには、企業の積極的な関与と努力が必要であり、ビジネスを通じて社会課題解決のために何ができるかを明確にしてこそ、「SDGs」がめざす持続可能な社会に貢献することができます。このような考えのもと、大同特殊鋼のマテリアリティを特定しました。議論を重ねて抽出した課題の中には、これまでCSR活動の中で実践してきた項目と重複するものもありましたが、課題解決という視点で、CSRからもう少し踏み込んだ活動を行っていく必要があります。例えば、CO2排出量削減に関しては当社単独での取り組みを積極的に行ってきましたが、これからは、調達先から製品供給先までのサプライチェーンの中で見直しを図っていくことが重要です。また、安全や人材といったこれまでも注力してきた分野についても、今まで以上に踏み込んだ施策を実施することで強みを強化していきます。
ステークホルダーからの信頼を得られなければ、企業として存在する意味を失います。当社が30年後、50年後、100年後の社会からも信頼を得、存在する意味を持ち続ける企業であるために、今何をすべきかを表したものが大同特殊鋼のマテリアリティです。「SDGs」や「ESG投資」を通じてサステナビリティの重要性が増していく中、事業環境や社会動向の変化に伴う取り組むべき課題の変容にも柔軟に対応しながら、サステナブル経営を実践していくことが当社の持続的成長につながると考えています。

当社の創業者である福沢桃介が社員の戒めとして掲げた「互戒十則(ごかいじゅっそく)」の中には、十則のうち四則に「需要家」という言葉が書かれています。100年前の企業家からの「お客様を大事にするというビジネスの基本を忘れるな」とのメッセージを受け継ぎ、常にお客様に寄り添い、お客様と共に成長してきた歴史が今の大同特殊鋼を形作っています。製造業の柱であるQCD(Quality/Cost/Delivery)を極めると同時に、お客様を含め、すべてのステークホルダーの信頼に応える総合特殊鋼メーカーとして、サステナビリティへの取り組みを継続していきます。